Fundraising/2020-21 Report/ja

From Meta, a Wikimedia project coordination wiki
2020〜2021年募金活動年次報告書
2020〜2021年募金活動年次報告書

はじめに

2020〜2021年度の間[1]、ウィキペディアは新型コロナウィルス(COVID-19)パンデミックで揺れる世界に無償の知識を提供し続けました。私たちは、「世界に対して信頼できる中立的な情報を提供する」という不変のコミットメントを維持しました。人々が家で過ごす時間が長くなり、教室がオンラインに移行したことで、ウィキペディアへのアクセス数は大幅に増加しました[2]。世界中のコミュニティが困難な状況に直面したにもかかわらず、今年度はかつてないほど多くの寄付が寄せられ、読者からの支援が世界中で記録を更新しました。私たちは世界30カ国 以上で募金活動を行い、昨年は39言語で支援者とのコミュニケーションをとりました。ご寄付のひとつ一つに心から感謝しています。本レポートは、私たちの募金活動のやリ方や具体的な数字を明らかにすると同時に、読者、慈善家、助成団体、そして愛すべきボランティア編集者のコミュニティを称えるものでもあります。私たちの活動は、皆様のおかげで成り立っています。ウィキペディアが今年20周年を迎えられたのは、他ならぬ皆様のおかげなのです。


数字でみる一年

大陸別の寄付金総額

大陸別の寄付金総額
大陸別の寄付金総額
注:金額は米ドルで端数処理されています[3]. 匿名での寄付やオフラインでの寄付(計457万米ドル)は、大陸別の内訳には含まれません。

募金メッセージの翻訳や、各地域へのローカライズについてご意見・ご感想は、電子メール [1] までご連絡ください。

寄付金総額の内訳

寄付金総額:1億5,476万3,121米ドル(支援者数:770万人以上)

FY2021 WMF Fundraising Report Revenue Raised by Channel
FY2021 WMF Fundraising Report Revenue Raised by Channel
上記は、2020〜2021会計年度に受領した寄付金を米ドルで表示しており、将来の寄付の約束は含みません。 大型寄付とは、1,000ドル以上の寄付を指します。ただし、年間合計には、ドナー・アドバイズド・ファンドのような大型寄付に該当する1,000米ドル未満の寄付も含まれます。「その他」には、ウィキペディア・アプリ、ポータルサイト、サイドバー、追加チャンネルなどが含まれます。[4] 「チャプターによる寄付」には、ウィキメディア・ドイツとウィキメディア・スイスを通じた読者からの寄付が含まれます。


本年度は24.7%の収入増加

FY2021 WMF Fundraising Report Total Revenue by Fiscal Year
FY2021 WMF Fundraising Report Total Revenue by Fiscal Year
注:金額はすべて100万米ドル単位で端数処理されています。財団の活動の詳細については、 2020-2021年度の年次計画書をご覧ください。


2020〜2021会計年度寄付件数は前年比41%増加しました。


平均寄付金額は1.64 米ドル減少しました。

FY2021 WMF Fundraising Report Average Amount by Fiscal Year
FY2021 WMF Fundraising Report Average Amount by Fiscal Year
注:金額は米ドルで端数処理されています。


数字でみる一年:英語圏での募金活動

毎年もっとも大規模に行われる英語圏での募金活動は、6カ国(オーストラリア、カナダ、アイルランド、英国、米国、ニュージーランド)にまたいで展開されます。この募金活動は、ウィキメディア財団の年間収入の50%近くをもたらします。

これらの国々では、幅広い層の個人支援者からのサポートが続いています。寄付額の平均は約15米ドル [5] で、寄付の半数以上は10米ドル未満です。ウィキペディアを支援することは、世界中の何百万人もの人々にとって身近な選択肢であり続けています。寄付をする余裕がない人がいることは承知していますが、それこそがウィキペディアの存在理由です。私たちの使命は、「無償の知識」を世界に開き、誰もがどこからでも利用できるようにすることです。


英語圏におけるオンライン募金活動
(バナーと電子メール):
2020〜2021会計年度の種類別 収入内訳

FY2021 WMF Fundraising Report Revenue Share by Source
FY2021 WMF Fundraising Report Revenue Share by Source

オンラインの募金活動(2020~2021 会計年度)

ウィキメディア財団の役割の一つは、プロジェクトの自由と独立性を損なわないようにすることです。財団の資金の大部分は、世界中の個人支援者から集まります。特定の組織や個人が私たちの決定に影響を及ぼす可能性を減らすことで、財団の独立性を維持するモデルです。私たちの価値観にも合致しており、読者からの寄付金を活用して彼らの「無償の知識」のニーズを満たし、読者への透明性を保証します。この収益モデルが、財団の独立性をどう守っているかについては、ウィキメディア財団の基本理念をご覧ください。

電子メール、バナー、そしてウィキペディアアプリをまたいだコンテンツ戦略では、以下の点で適切なバランスを心がけています。

  • 認知: ウィキペディアの仕組みやユニークさを読者に伝えます。
  • 必要性: 財団の収入の大部分は、世界中の読者によるオンライン募金活動への貢献から成ります。メッセージでは、読者からの寄付がいかに重要であるかを強調します。
  • 有用性: 読者が寄付する主な理由は、「ウィキペディアが自分にとって有用である」からです。
  • 志を感じさせる言葉: 私たちのミッションへの共感を呼びかけ、「誰もが知識を無償で得られる世界」の構築に協力してくれる人を募ります。
  • 感謝の気持ち: 募金活動のメッセージを通じて、ボランティア・コミュニティ、読者、支援者への心からの感謝の気持ちを表します。

資金調達チームは、さまざまなデータに基づいてコンテンツ戦略を立てています。読者や支援者へのアンケート、コミュニティ・フィードバック・グループ、支援者フォーカス・グループ、ソーシャルメディアのセンチメント、寄付率の実績などのフィードバックは、すべて募金活動メッセージの形成に役立っています。募金活動は、読者にウィキペディアについて知ってもらうと同時に、ウィキメディアの活動を支えるための資金を調達する機会です。私たちのチームは、変化する状況、成果、フィードバックに適応しながら、継続的な改善に取り組んでいます。

以下は、バナーやメールでの訴求に使われたメッセージの例です。

「皆様が寄付してくださる一番の理由は、ウィキペディアが役に立つからです。もしウィキペディアの情報に2.75米ドルの価値があると思われるのでしたら、知識に平等にアクセスできる世界を実現するためにぜひご寄付をお寄せください。」

「ウィキペディアの根幹は、誰にも開かれた、信頼できる中立的な情報を提供するために活動する人々のコミュニティです。」

「ウィキペディアは、最高額の入札者、広告主、または企業のどれにも属しません。私たちはあなたのような読者、そして編集者や支援者と共にあります。あなたは私たちのコミュニティであり、家族です。あなたこそ、私たちが存在する理由です。」

「あなたは、事実に基づいた偏りのない「無償の知識」を誰もが得られる未来のために寄付をしてくださった、極めて特別な読者の一人です。あなたには、感謝しても感謝しきれません。この20年間で、ウィキペディアコミュニティは300言語以上、5,600万件超の記事を世界中の何億もの人々に提供する百科事典を築き上げました。」

「あなたは特別な存在です。」

バナー訴求のメッセージ例:

FY2021 WMF Fundraising Report Desktop Large Banner
FY2021 WMF Fundraising Report Desktop Large Banner
FY2021 WMF Fundraising Report Desktop Small Banner
FY2021 WMF Fundraising Report Desktop Small Banner

新しい支援者とのつながり

1年前、私たちは初めてインドで募金活動を開始しました。現地のウィキペディア読者とつながり、寄付で支援できる方を募りました。インドの読者は、ウィキペディアを毎月9億回以上訪問しており、閲覧数は世界で4番目です[6]。読者数が多いだけでなく、インドのウィキペディアはインド国内で話される23言語で利用可能で、同国のウィキペディア編集者は百科事典にとって必要不可欠な存在です。2020年、インドのボランティア編集者のおかげで、 新型コロナウィルス(COVID-19)に関する中立的で信頼の高い情報 がウィキペディアのインド系言語で読めるようになりました。

2020〜2021会計年度には、インドの読者から50万件以上の寄付が集まりました。インド初の募金活動では、私たちからのメッセージを読者に伝え、彼らに何が響くのかを探りました。「なぜインドで募金活動をしているのか」という質問が寄せられた際にはブログ記事で回答し、読者に寄付をお願いする理由と、ウィキペディアとウィキメディア・プロジェクトを寄付がどう支えているのかを伝えました。募金活動の過程を通して、インドの読者にとって、より明確で意義のあるメッセージへと洗練させていきました。インドの読者の皆様の広い心と熱心さには、心から感謝しています。

「無料」という言葉が「30日間のお試し」と同義語になったグローバル化時代に、ウィキペディアは何テラバイトもの情報をダウンロード可能なリンクや関連記事とともに提供し、読者の利便性のためにさまざまな言語に翻訳してきました。その代わりにウィキペディアが求めてきたのは、「よろしければ、このセクションを改善してください」というヘッダーの問いかけだけです。これに勝る無私の行為はないでしょう。(インド在住の支援者)

継続寄付

昨年の大きな目標のひとつは、引き続き、毎月の定期寄付プログラムを構築することでした。寄付の大半は、1回限りのご寄付です。ウィキメディア財団の長期的な安定性を強化するために、寄付の手続きの最後に新たな機能を追加し、定期寄付という選択肢の存在を読者に知らせました。2020〜2021 会計年度の経常収益は2,000万米ドルを超え、前年比60%以上増加しました。

FY2021 WMF Fundraising Report Monthly Convert
FY2021 WMF Fundraising Report Monthly Convert

支援者と共に祝う20周年の誕生日

ウィキペディアの創業者であるジミー・ウェールズから支援者の皆様にお礼のメールを個別に送るだけでなく、コミュニティ全体で感謝の気持ちを共有するために、ありがとうキャンペーンを実施しました。 今年は、ウィキペディアの20年の歴史、それを可能にしているすべての人々を祝すために、誕生日をテーマにしたメールを支援者の皆様にお送りしました。

FY2021 WMF Fundraising Report Thank You Email
FY2021 WMF Fundraising Report Thank You Email

まとめ 世界中のあらゆる場所から寄せられた大勢の人々からの愛は、私たちの心に響きました。「知識の集合体がすべての人にとって無償な世界」を実現するという私たちのビジョンに、多くの人が貢献してくれていることに感動しています。



大型寄付

大型支援者は、ウィキペディア財団に1,000米ドル以上を寄付、またはその他の特定の方法で寄付してくださった皆様です。

2020〜2021会計年度は、大型支援者による寄付額は1,480万米ドルから1,840万米ドルに増え、前年比23%増となりました。これは財団のミッションを加速する重要な出来事でした。

大型支援者の数は23,000人近くになり、2,000以上の個人や団体が寄付を寄せてくださいました。その他にも、2万人以上の個人や団体の皆様が大型寄付に該当するドナー・アドバイズド・ファンドなどの方法で支援してくださいました。

これらの支援者の多くは、基金の 支援者ページ上で名前を確認でき、彼らはウィキメディアの使命に欠かせない"与える精神"を体現しています。当財団の最新の年次報告書で紹介した キャサリン・ピアース氏は次のように述べています。「人類の尊厳を高め、知識の灯りと発見することの喜びを広めるために、学びへのアクセスを地球の隅々で可能にする」というウィキペディアの熱心な取り組みに心から感謝しています。」


マッチングギフト

2020〜2021会計年度は、企業の社会貢献プログラムを通じてウィキメディア財団に43,000件以上の寄付が寄せられました。これらのマッチングギフトと給与控除プログラムでは、従業員によるウィキメディア財団への個人的な寄付を雇用主がマッチングさせることで、元の寄付金額を数倍にすることができます。

これらの寄付の総額は180万米ドルにのぼり、そこにはグーグル(Google)社からの約50万米ドル、マイクロソフト(Microsoft)社からの約23万米ドル、アップル(Apple)社からの13万米ドルの従業員からの寄付と雇用主によるマッチングギフトが含まれます。このプログラムによる収入は、2019〜2020会計年度から15.6%増加しました。


ウィキメディア基金

2016年1月に、ウィキペディアの未来とその他の無償の知識を追求するサイトの将来を保証するための長期基金として、ウィキメディア基金を設立しました。ウィキメディア財団の会計年度の最終日である2021年6月30日に、当初の「2026年までに1億米ドル」の目標を上回ることができました。基金の支援者の皆様には、心から感謝いたします。このマイルストーンの達成によって、基金の目的である「ウィキペディアとその他のウィキメディア・プロジェクトに長期的な収入源の提供」を開始できます。

予見できる将来にわたって使命を果たそうとする非営利分野の組織にとって、基金は積極的な財務計画の重要な一部であると考えられています。日々の運営を支えるために年次の募金活動やその他の収入源に目を向ける一方で、基金で長期的な目標や使命を支えるのです。昨年1,890万米ドルを調達したことで、ウィキメディア基金は合計1億250万米ドルに達しました。アマゾン(Amazon)社からの100万米ドルの寄付、8件の遺贈、その他に120万件の寄付がありました。遺贈を含む計画的寄付は、基金の重要な役割を担っています。2020年〜2021年会計年度には1,085人の支援者が計画的寄付を約束し、ウィキペディア・レガシー・ソサエティーの会員数は約1,450人になりました。遺贈は、将来の寄付のための誓約を集める方法で、最も一般的なのは遺言書や受取人指定による寄付です。私たちは、米国で法的な遺言書を作成するための無料のオンラインツールFreeWill社と提携し、ウィキメディア基金への遺贈を簡単に行えるようにしました。

基金への支援者や遺贈支援者の多くは、基金の公式サイトの支援者ページや、ウィキペディア・レガシー・ソサエティーのメンバーとして認識されています。

ウィキメディア基金のガバナンスと方針については、ウィキメディア基金をご覧ください。

支援者からのメッセージ

2020〜2021会計年度の期間中、当財団の支援者対応チームは39言語で19万件以上の問い合わせに対応しました。これらの支援者の大半は、ウィキペディアやその他のウィキメディア・プロジェクトへの感謝の気持ちを表し、私たちのミッションを支えた理由を教えてくれました。以下にその一部をご紹介します。


「私は85歳です。ウィキペディアは私と夫にとって恵みです。何かについて話していて疑問が浮かんだとき、ウィキペディアはいつでも答えてくれます。」 (アメリカ在住の支援者)


「ウィキペディアは、私と私の愛する人たちの生活に価値を与え続ける独特な存在です。ウィキペディアの収支がクラウドファンディングに基づいていることが、ウィキペディアの非物質的な価値に大きく寄与していると感じます。私に金銭的余裕があって、ウィキペディアが支援を必要としている時にはいつでも貢献します。」(オランダ在住の支援者)


「今年がウィキペディアの20周年だとは知りませんでした、おめでとうございます!私はウィキペディアから多くのことを学びました。ウィキペディアは私だけでなく、この世界のすべての人にとって宝物です。ただ、一人ができることは限られています。毎年ウィキペディアを支援する私のようなウィキ読者がもっと増えることを願っています。つたない英語をお詫びします。ともあれ、ウィキペディアの発展を願っています!」(日本在住の支援者)


「ウィキへ、あなたは私の親友です。心底そう感じています。」(インド在住の支援者)


「ウィキペディアは、とても重要でありながら軽視されがちなインターネット界の最も素晴らしい存在の一つです。インターネットが広告や意見で溢れ返る中、広告がなく、その中立的な立場に新鮮さを感じます。丁寧に寄付を呼びかけるページやメールを読むと、心が温まります。」(オーストラリア在住の支援者)


「世界は難しい状況に直面していますが、この一粒の砂で、偉大な知識の砂浜に貢献できたことを光栄に思います。(ペルー在住の支援者)


「偉大で私にとって大切なものに少しでも貢献できる機会をくれてありがとう。ネットワークが、その本来の目的である「人々に知識を届ける」ために活用されているのを見るのは新鮮です。幼い私にとって、教育は遠い存在でした。あなた方の努力によって、他の人がその恩恵を受けているのを見ると嬉しくなります。」(スウェーデン在住の支援者)


「どういたしまして。真実は、人類の礎(いしずえ)です。今後も築き続けてください。」(アイルランド在住の支援者)


「私は作家ですが、車いすに乗っています。移動手段の関係で地元の図書館に行けない私にとって、ウィキペディアは命の恩人です。もしウィキペディアがなかったら、私は途方に暮れてしまうでしょう。図書館のほうが良いですが、ウィキペディアは2番目に良いです。ありがとう。」(カナダ在住の支援者)


このレポートについて

最後まで募金活動報告書をお読みいただきありがとうございます。 このレポートについてのご意見・ご感想は、 2020年〜2021年募金活動年次報告書のウェブサイト をご覧ください 。ウィキメディア財団の募金活動に関する情報を喜んで共有いたします。皆様からのフィードバックを心よりお待ちしております。ご意見・ご質問には、できる限りお答えいたします。


注釈
  1. 2020年〜2021会計年度は2020年7月1日から2021年6月30日までです。
  2. 2019年〜2020会計年度、全言語を合わせたウィキペディアへのアクセス数は、月間平均は164億ページビューを記録しました。2020年〜2021会計年度の同数字は、169億ページビューに増加しました。
  3. 前年度までの数字は、キャンセルされた寄付を除外していることがあります。 この募金活動報告書に記載されている金額は、米国の一般会計原則に準拠しておらず、当財団の監査報告書およびアメリカ合衆国内国歳入庁のフォーム990で報告された収入とは異なります。
  4. 「その他」には、ウィキペディアのサイドバー、ウィキメディア財団の「その他の寄付する方法」, ページ、ウィキペディアのアプリ、「www.wikipedia.org」,上のバナー、各種ソーシャルメディア、小切手 、匿名や自発的な寄付(例:「donate.wikimedia.org」への直接のアクセス)や、オフラインの寄付が含まれます。
  5. 平均寄付額は、英語圏のキャンペーンに含まれる国(米国、カナダ、英国、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド)の収入の合計を、2020年7月1日から2021年12月31日までの期間に得た寄付件数で割って算出しています。対象のチャネルには、電子メール、デスクトップおよびモバイルのバナー、ウィキペディアアプリ、ウィキペディアウェブサイトのサイドバー、「www.wikipedia.org」上のバナーが含まれます。大型寄付に特化した募金活動(年次およびイベント時の呼びかけを含む)は除外しました。
  6. サイトへのアクセス統計は「 ウィキメディア統計 」で見ることができ、本報告書では2021年6月のデータを使用しています。