Grants:Programs/Wikimedia Community Fund/Rapid Fund/Edit-a-thon of Japanese heritage 2025 (ID: 22967538)/Final Report
Application type: Standard application
Part 1: Project and impact
1. Describe the implemented activities and results achieved. Additionally, share which approaches were most effective in supporting you to achieve the results. (required)
実施した活動
2025年7月5日に日本の北海道小樽市でウィキペディアタウン in 小樽を開催した。開催は1日で、午前10時から午後5時まで行われた。開催内容は小樽市の日本遺産に関するレクチャー、資料の読み方と記事の書き方に関するレクチャー、グループでの記事執筆、そして成果発表という構成とした。募集に先立ち、開催告知と参加者募集を目的としたチラシを作成し、小樽市内を中心に北海道内で配布と声がけを行った。参加者にはイベント開催前と開催後にアンケートを実施し、イベントを通して各参加者に起こった変化を確認した。これらの結果を踏まえて、当日の様子と成果を伝えるブログ記事を執筆し公開した。
達成した成果
参加希望者として13人の申し込みがあり、そのうち10人が実際に参加した。参加者の66パーセントが小樽市在住で、岩見沢市、札幌市、函館市がそれに続いた。参加者の年齢の中央値は45歳で、日本人全体の年齢の中央値がおおよそ50歳であることと、大都市部への若者が集中している状況を踏まえると、開催地においてはやや若い年齢層の人々が参加したと言える。メトリクスの集計は開催1週間後までを計測対象とした。これは、帰宅後にエディタソンで担当した箇所の続きを執筆したり、新しい目標に挑戦する参加者がいることを想定したためである。編集には講師やスタッフも加わったため、編集者は合計で13名となった。
参加者の活動を記録するためにOutreach Dashboardを使用した。また、参加者の属性やエディタソンに対する評価を得るためにGoogle Formを使用した。測定結果において、参加者の人数については目標値を下回ったが、ウィキペディアの記事編集数については目標値の200パーセント、出典追加数については目標値の220パーセント、追加文字数については目標値の393パーセントを達成した。また、ウィキデータへの追加数についても目標の4500パーセントという結果を得られた。 参加者の評価としては、小樽の歴史・文化・日本遺産について新しい発見があり、興味や愛着について変化が生じたという結果を得られた。また、全員が今後も小樽の歴史・文化・日本遺産に関わるイベントに参加したいと回答した。
こうしたことを踏まえ、今回のエディタソンでは人数こそ多くないものの、熱心な人々が参加し、一定の成果を残すことができたと考えている。また、継続的な参加意欲を示唆する結果となったことから、同様のイベントを開催することを含めた継続的なイベント運営が期待されていると言える。
効果的だったアプローチ
ウィキペディアの記事編集数、出典追加数、追加文字数が目標を上回ったことについて
文字数をたくさん追加できそうなテーマを選定していたことと、既にウィキペディアンとして活躍されている参加者が1名参加していたことが効果に結びついたと考えている。
テーマ選定については小樽中央市場というまだ記事が存在しない事柄を選び、事前に充分な関連資料を用意した。こうしたテーマ設定や資料収集ができたのは小樽市で地域歴史遺産の利活用について研究と実践を行っている講師の高野氏によるところが大きい。
初心者向けのエディタソンのため、通常は講師やスタッフがゼロからアシストすることになるが、今回は参加者の中に熟練者がいたことで、参加者同士で疑問を解決したり、ノウハウの共有が行われた結果、全体として多くの文字数を追加することができたと考えられる。
ウィキデータへの追加量が目標を上回ったことについて
ウィキペディアの本文に比べて、ウィキデータは記入すべき事柄が簡潔かつ明快であるため、最初に編集の「型」を覚えれば、あとは編集者の興味とウィキデータ化されていない事柄が結びつけば次々に追加可能である。実際、今回追加されたウィキデータの項目のうちおおよそ8割程度が小樽とは無関係な事柄であった。小樽をテーマにしたエディタソンではあったが、サービスの理念と参加者の興味が重なり、結果に結びついたことは意義深いと考えている。
今後も小樽の歴史・文化・日本遺産に関わるイベントに参加したいと全員が回答したことについて
元々、小樽に対して強い興味を持っている参加者がいたことに加えて、資料を読んだり記事を書いたりした経験を通して小樽への理解と愛着が深まったことが結果に繋がったと考えている。参加者の感想の中に「自分たちで編集した場所への愛着」を挙げた参加者もいた。地域に積極的に関わることで愛着が湧き、それが次の活動へ繋がる良い循環を作っていくことが今後の日本の地方都市や集落における持続可能性において重要であり、エディタソンはその入り口として広く受け入れられることを願う。
2. Documentation of your impact. Please use space below to share links that help tell your story, impact, and evaluation. (required)
Share links to:
- Project page on Meta-Wiki or any other Wikimedia project
- Dashboards and tools that you used to track contributions
- Some photos or videos from your event. Remember to share access.
You can also share links to:
- Important social media posts
- Surveys and their results
- Infographics and sound files
- Examples of content edited on Wikimedia projects
参加者の活動記録
https://outreachdashboard.wmflabs.org/courses/ウィキペディアタウン_in_小樽実行委員会/ウィキペディアタウン_in_小樽
アンケートの集計結果
https://docs.google.com/spreadsheets/d/18PduW0z-RfuUHIUG_T8eAi_iBEENTNipj387zQHuCAc/edit?usp=sharing
広報素材(チラシ、SNS画像など)
https://drive.google.com/drive/folders/1U_lZC_KeWgAqFsiXIGGxgPuf65sPG9Hm?usp=share_link
当日の写真を含む開催レポート記事
北海道の小樽で日本遺産の記事をつくってみた
日本遺産の地域が持つ魅力と広域自治体展開の可能性を考えるー北海道の小樽でのウィキペディアタウンを終えて
Additionally, share the materials and resources that you used in the implementation of your project. (required)
For example:
- Training materials and guides
- Presentations and slides
- Work processes and plans
- Any other materials your team has created or adapted and can be shared with others
「小樽市の日本遺産を学び/編集する」スライド(高野宏康)
https://drive.google.com/file/d/1GHuxZnVcgx9VD4XRNdCp_N64PR_R1tQZ/view?usp=share_link
「資料の読み方・記事の書き方」スライド(あらいしょうへい)
https://drive.google.com/file/d/12g310Ok9m-HZ736ZY-tPGVgNPyjZ1B6F/view?usp=sharing
3. To what extent do you agree with the following statements regarding the work carried out with this Rapid Fund? You can choose “not applicable” if your work does not relate to these goals. Required. Select one option per question. (required)
| A. Bring in participants from underrepresented groups | Not applicable |
| B. Create a more inclusive and connected culture in our community | Neither agree nor disagree |
| C. Develop content about underrepresented topics/groups | Strongly agree |
| D. Develop content from underrepresented perspectives | Strongly agree |
| E. Encourage the retention of editors | Strongly agree |
| F. Encourage the retention of organizers | Strongly agree |
| G. Increased participants' feelings of belonging and connection to the movement | Strongly agree |
| F. Other (optional) |
Part 2: Learning
4. In your application, you outlined some learning questions. What did you learn from these learning questions when you implemented your project? How do you hope to use this learnings in the future? You can recall these learning questions below. (required)
You can recall these learning questions below:
- どんなデータが得られると考えるか:
- 参加者の対象地域に対する興味関心の内容や強さの変化
- それぞれの参加者の気づき
- それぞれの運営者の気づき
- 得られたデータからどんなことを学びたいか:
- 住民自身が地元の文化・歴史遺産を地域振興に役立てるための手がかり
- 対象地域が持つ特有の文化・歴史遺産を他の文化圏やコミュニティへ発信し、彼らからの理解や共感を得るための手がかり
- 都市部に流出した若い世代が地元に戻る動機を作るための手がかり
自ら執筆した記事や担当箇所に愛着を感じるというコメントが複数あった。これは筆者(Hurohukidaikon)自身も、初めてウィキペディアの記事を執筆した後に感じたことだ。この経験を元に、参加者募集のチラシには「この街、知れば知るほど好きになる!」というキャッチコピーを表記した。残念ながらこのキャッチコピーが参加者の応募とどのように関係していたか調べる手立ては無いが、少なくとも意図した体験を参加者に提供することができたのではないかと思う。
住民の多くにとって、文化・歴史遺産と地域愛は密接に関係していると考えている。特にその自治体へ移住を考えている人々にとっては合理性を超えた部分での決め手となり得る。この点においてウィキペディアエディタソンの良いところは、その自治体に長く住む「ベテランさん」と移住または遠方から参加した「初心者さん」が、対等な立場で一緒に成果を作る体験ができることだ。つまり、ほとんどの参加者はウィキペディアの編集経験が無く、地元に関する知識の量を問わず、皆等しく四苦八苦しながら記事を書き、公開まで辿り着く。この中でベテランさんと初心者さんの間に多様なコミュニケーションが生まれる。加えて、公開された記事はその場に居合わせたみんなの成果であるという感覚も得られる。今回の参加者が事後アンケートに記述した「愛着」にはそうした背景も含まれているように見えた。
5. Did anything unexpected or surprising happen when implementing your activities? This can include both positive and negative situations. What did you learn from those experiences? (required)
募集時
申し込みの時点でウィキペディアのアカウント作成をお願いした。そのため全員がアカウント作成を済ませた状態で参加することができた。これにより開催当日にアカウント作成ができない人が続出する問題が回避できた。一方で、Outreach Dashboardでトラッキングする必要性から「利用者名」の回答を求めたところ、回答者自身の本名を回答した参加者が2割程度いた。これは設問した側としては想定外であったが、日本のウェブサービスにおいて「利用者名」という呼称は一般的でないため、「利用者名(ログインする時に入力する名前)」という設問にした方が主催者が意図した回答が得やすかったかもしれない。こうした少しの配慮で事務作業の手間を減らしていくことができるだろう。
会場の定員は20名と聞いていたが、エディタソンのようなグループワークを伴うイベントを行う場合は設備の関係から15名程度が定員になることが後からわかった。また募集定員の設定時に、講師やスタッフを会場に入る人数として含めていなかった。従って目標値の設定が妥当ではなかった。開催当日の会場には12名の人がいたことから、実際の定員の80パーセント程度で運営できたことになる。
開催時
ネットワーク環境のトラブルによって記事の編集や画像のアップロードに支障があった。このことは多くの参加者が指摘しており、作業効率と満足度に悪影響があった。トラブルの内容としてはウィキペディア側のIP制限によるものと考えている。
会場が暑かったという意見があった。体感温度については個人によって感じ方が大きく異なるため、全員が快適な環境を用意することは難しいが、会場にいる人同士で声を掛け合い、必要に応じて冷房の設定を変更したり座席の交換を促したりするなどの配慮があると良かっただろう。こうした細やかな配慮は参加者の満足度に繋がるが、今回は講師2人のみで当日のすべての運営を行ったため手が回らなかった。
会場のトイレが男女共用であったことで、特に女性の参加者が気を遣ったという指摘があった。これが実際にどのようなトラブルとして現れたのか否かについてはアンケートの回答からは推し量ることができないが、理想的には男女別のトイレが用意されるべきだと思う。今後はこの点にも配慮して会場選定を行いたい。
6. What is your plan to share your project learnings and results with other community members? If you have already done it, describe how. (required)
はい。以下の記事にて学びや成果を共有しているので参照されたい。
北海道の小樽で日本遺産の記事をつくってみた
日本遺産の地域が持つ魅力と広域自治体展開の可能性を考えるー北海道の小樽でのウィキペディアタウンを終えて
Part 3: Metrics
7. Wikimedia Metrics results. (required)
In your application, you set some Wikimedia targets in numbers (Wikimedia metrics). In this section, you will describe the achieved results and provide links to the tools used.
| Target | Results | Comments and tools used | |
|---|---|---|---|
| Number of participants | 20 | 10 | Google Form。参加申し込みは13名の応募があり、そのうち10名が実際に参加した。 |
| Number of editors | 20 | 13 | https://outreachdashboard.wmflabs.org/courses/ウィキペディアタウン_in_小樽実行委員会/ウィキペディアタウン_in_小樽
主催者も編集に加わったため、参加者数と主催者数を合算した値となる。 |
| Number of organizers | 2 | 3 | Araisyohei(講師)、Hashi-ota(講師)、Hurohukidaikon(事務局) |
| Wikimedia project | Target | Result - Number of created pages | Result - Number of improved pages |
|---|---|---|---|
| Wikipedia | 10 | 4 | 16 |
| Wikimedia Commons | 40 | 21 | 0 |
| Wikidata | 1 | 5 | 40 |
| Wiktionary | |||
| Wikisource | |||
| Wikimedia Incubator | |||
| Translatewiki | |||
| MediaWiki | |||
| Wikiquote | |||
| Wikivoyage | 1 | 2 | 0 |
| Wikibooks | |||
| Wikiversity | |||
| Wikinews | |||
| Wikispecies | |||
| Wikifunctions or Abstract Wikipedia |
8. Other Metrics results.
In your proposal, you could also set Other Metrics targets. Please describe the achieved results and provide links to the tools used if you set Other Metrics in your application.
| Other Metrics name | Metrics Description | Target | Result | Tools and comments |
|---|---|---|---|---|
| 事前アンケートの回答者数 | エディタソンの実施前に参加者にアンケートを回答してもらいます。
エディタソンの実施前後で、対象地域の歴史や文化に対する興味や関心がどのように変化したかを測定します。 |
20 | 10 | https://docs.google.com/spreadsheets/d/18PduW0z-RfuUHIUG_T8eAi_iBEENTNipj387zQHuCAc/edit?usp=sharing
個人が特定できる情報を除去し、事前アンケートと事後アンケートの回答者を突合したもの。 |
| 事後アンケートの回答者数 | エディタソンの実施後に参加者にアンケートを回答してもらいます。
エディタソンの実施前後で、対象地域の歴史や文化に対する興味や関心がどのように変化したかを測定します。 |
20 | 10 | https://docs.google.com/spreadsheets/d/18PduW0z-RfuUHIUG_T8eAi_iBEENTNipj387zQHuCAc/edit?usp=sharing
個人が特定できる情報を除去し、事前アンケートと事後アンケートの回答者を突合したもの。 |
| 追加文字数 | 3000文字 x 10記事 = 30000文字 | 30000 | 118000 | https://outreachdashboard.wmflabs.org/courses/ウィキペディアタウン_in_小樽実行委員会/ウィキペディアタウン_in_小樽
Byte数なので日本語記事の追加文字数とは言えないが、この値を用いることを前提として設定した目標値なのでそのままの値を結果として採用する。 |
| 追加出典数 | 5個 x 10記事 = 50個 | 50 | 110 | https://outreachdashboard.wmflabs.org/courses/ウィキペディアタウン_in_小樽実行委員会/ウィキペディアタウン_in_小樽 |
9. Did you have any difficulties collecting data to measure your results? (required)
Yes
9.1. Please state what difficulties you had. How do you hope to overcome these challenges in the future? Do you have any recommendations for the Foundation to support you in addressing these challenges? (required)
Outreach Dashboardは大変便利だが、以下の点においてまだ改善の余地があると思う。
- Bytes Addedの値については、おそらくWiki構文部分もカウントされている。公平に貢献度を示す意味では有用だが、その内訳として本文とWiki構文の割合がわかるようになるとより分析がしやすくなると思う。
- 編集した記事の一覧ページやアップロードしたファイルの一覧ページに項目数を表示して欲しい。現在は目視で数える必要があり、大量にアップロードされた場合に集計に手間がかかることと数え間違いが起こる可能性があるためである。
Part 4: Financial reporting
[edit]10. Please state the total amount spent in your local currency. (required)
289179
11. Please state the total amount spent in US dollars. (required)
1958.42
12. Report the funds spent in the currency of your fund. (required)
Provide the link to the financial report https://docs.google.com/spreadsheets/d/1e2dCW6XkQukK_dt8bI5Pz-0pgfGg93mAfeWfq4NpCmk/edit?usp=sharing
12.2. If you have not already done so in your financial spending report, please provide information on changes in the budget in relation to your original proposal. (optional)
13. Do you have any unspent funds from the Fund?
Yes
13.1. Please list the amount and currency you did not use and explain why.
9,821JPY 講師の移動および宿泊にかかる費用が想定よりも安く済んだため。
13.2. What are you planning to do with the underspent funds?
B. Propose to use them to partially or fully fund a new/future request with PO approval
13.3. Please provide details of hope to spend these funds.
今回の助成では、我々が提出した当初の予算計画から半分以下に減額された金額での助成決定となった。これによって予算の見直しによる稼働時間の増加と講師やスタッフの人件費の大幅な削減が発生した。これは以下の2つの点で問題があった。
ひとつは見込まれる実働時間に対する報酬額の低下により、講師やスタッフのモチベーションが低下したことである。当初に取り決めていた報酬額よりも減額されることとなり、事務局としては関係者に対して申し訳ない気持ちになると共に、本当にこのプロジェクトを推進するべきなのか疑問に思うことが何度もあった。
もうひとつは開催当日に庶務(講師役以外の全て。例えば、受付、活動記録、空調の調整、参加者の困りごとへの対応、など)を担当するスタッフの確保ができず、参加者の満足度を下げることに繋がった。
以上のようなネガティブな面も多々あったが、予算の見直しを通してより効率的な資金運用のノウハウを蓄積できた。たとえば旅費を当初の想定よりも安くするために交通手段の組み合わせなどを工夫した。今回の余剰金に関しては、今後の申請予定の助成金プロジェクトで講師やスタッフの人件費に充てることでエディタソン参加者の満足度向上に繋げたい。
14.1. Are you in compliance with the terms outlined in the fund agreement?
Yes
14.2. Are you in compliance with all applicable laws and regulations as outlined in the grant agreement?
Yes
14.3. Are you in compliance with provisions of the United States Internal Revenue Code (“Code”), and with relevant tax laws and regulations restricting the use of the Funds as outlined in the grant agreement? In summary, this is to confirm that the funds were used in alignment with the WMF mission and for charitable/nonprofit/educational purposes.
Yes
15. If you have additional recommendations or reflections that don’t fit into the above sections, please write them here. (optional)
本プロジェクトにおける人件費の妥当性の検討
[edit]助成金申請時に「講師とスタッフの人件費(時給)が高すぎる」という指摘を受けた。その結果、講師とスタッフが本プロジェクトの開催するために要した時間を個人ごとに記録するようにウィキメディア財団から提案された。
稼働時間の記録は以下の稼働時間管理表を用いた。本プロジェクトのキックオフミーティングを行った2024年12月27日を起点とし、各個人ごとに実稼働時間に基づいて記録を行った。毎回の稼働時間は稼働した本人の裁量と責任に基づいて記録した。 https://docs.google.com/spreadsheets/d/1GzMlr25VVcwvbdSo9XME8Z8dHKMfjnOYQzLmsk36v2w/edit?usp=sharing
講師やスタッフの人件費は以下の迅速助成金の予算書に基づいて実際に支払われた。 https://docs.google.com/spreadsheets/d/1e2dCW6XkQukK_dt8bI5Pz-0pgfGg93mAfeWfq4NpCmk/edit?usp=sharing
ここで、前述の二つの資料をもとに人件費の妥当性について考えてみたい。検討しやすくするために役割ごとに時給を算出する。稼働時間の記録は2025年9月30日までのものを用いる。また、1円未満は四捨五入する。
- あらい氏のInstructor Operating costs : 61,000円 / 27.5時間 = 約2,218円/時
- 高野氏のInstructor Operating costs : 61,000円 / 28.75時間 = 約2,122円/時
- 小林氏のStaff Operating costs : 36,600円 / 89.25時間 =約410円/時
- 小林氏のDesign costs : 30,500円 / 20.75時間 = 約1,470円/時
最低賃金との比較
[edit]はじめに、労働対価の基準として、厚生労働省が管轄する最低賃金を用いて検討する。ウィキメディア財団と本プロジェクトに携わる講師やスタッフの間には雇用関係は存在しないが、日本国内において法的に拘束力のある労働対価の指標であるため採用することとする。以下のページによると、執筆時点での全国加重平均額は1,121円となっている。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/index.html
これらを照らし合わせると、Staff Operating costsに関しては最低賃金の約36.6%という結果となり、この費目に対して「高すぎる」という指摘は不適切であり、むしろ「安すぎる」と言うことができる。また稼働時間と最低時給額から今回用意すべきだったStaff Operating costsの最小の予算は約100,049円と見積もることができる。
別の指標との検討
[edit]さて、先ほど用いた最低賃金を上回っていれば妥当なのだろうか?別の指標を用いて検討してみたい。調査会社の産労総合研究所が実施した「2025年度 決定初任給調査」によると、大学卒の初任給は239,280円であったという。大学卒の初任給も最低賃金に並んで一般的な労働対価の指標であるので採用することとする。 https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/chinginseido/shoninkyu/pr2507.html
ここで一例としてDesign costsを月給換算してみたい。便宜的に1日8時間労働、月20日稼働として時給を元に計算すると235,200円となる。おおよそ大学卒の初任給と同程度の水準であると言える。 また、Instructor Operating costsも同様に月給換算してみたい。すると、あらい氏が354,880円、高野氏が339,520円となる。これは2025年度の大学卒が入社後に毎年10,000円ずつ月給が昇給して10年程度で到達する水準であると言える。
これらは今回の人件費がどの程度であったかわかりやすくすることには役立つが、妥当か否かを検討するには不十分である。なぜなら各々が持つ経験とプロジェクトへの貢献度で判断すべきだからである。
貢献度については、例えばエディタソンにおける追加文字数の1文字あたりの単価を算出し比較することができる。しかし単に安くたくさんの文字がウィキペディアに追加されたからといって多くの貢献をしたとは言えないだろう。つまり貢献度自体の計測が難しく、今あるデータでは一様な比較ができない。
そこで講師やスタッフが持つ経験とその年数で考えてみたい。講師のあらい氏はウィキペディアの利用者として20年以上の経験があり、ウィキペディア日本語版の管理者としては5年以上の経験がある。講師の高野氏は北前船学および地域資源論の専門家として20年以上の経験があり、小樽商科大学の研究員としては10年以上の経験がある。スタッフの小林氏はグラフィックデザイナーとして10年以上の経験があり、エディタソンをはじめとするイベントの企画運営については3年以上の経験がある。
全員に共通することは、長い時間をかけて得た知識や経験の積み重ねを活かしている点である。どの役割も、知識や経験の全く無い者、もしくは浅い者で置き換えることは難しい。仮に予算が少ないからといってそのようなことをしていたら本プロジェクトは成立しなかっただろう。
人件費の妥当性については、様々な賃金の指標と各々の経験の列挙でも分かる通り、一様に妥当か否かを判断することは難しい。しかし、多様な経験を持つ人材の希少性という観点で考えれば、今回の人件費を決して「高すぎる」とは言えないだろう。
趣味として無償で貢献することはとても崇高な行いである。しかし世の中には仕事として貢献したい人々もいることを理解していただきたい。ウィキメディアのプロジェクト群は、そういう人々の知識や経験を報酬と引き換えに取り入れることで進化してきたと思う。そして、それを後押しするための制度として今回のような助成金があると考えている。
その助成金をどう活用するかは、助成金を受ける者の権利であると思う。それと同時に使途の正当性を示す義務も伴う。その点で、今回は申請時に人件費の正当性を示す指標を持ち合わせていなかったことが我々の負うべき義務に対する不足点であったと言える。従って人件費が妥当であるかという問いかけは正当であり、前述のような示唆に富む結果を得ることができた。
今後、同様のエディタソンを助成金を用いて企画する際には、今回得られた結果を参考に人件費を検討したい。
Review notes
[edit]Review notes from Program Officer:
N/A
Applicant's response to the review feedback.
N/A