ウィキメディア財団/CEO/更新/2025年12月号
ウィキメディア財団の新しいCEOをお迎えして

ウィキメディア財団理事会は、新しいウィキメディア財団CEOにバーナデット・ミーハン氏を任命しました。公式の着任は1月20日の予定で、円滑な引き継ぎのためそれまでは現在のCEOであるマリアナ・イスカンデルが引き続きCEOとして留まります。
バーナデットはこれまでのキャリアを、ミッション志向かつ公共のための仕事に捧げてきました。直近では2022年から2025年までの間、アメリカ合衆国のチリ大使を務め、それ以前にはオバマ財団において国際プログラム統括責任者として、アフリカ・アジア太平洋・ヨーロッパ・ラテンアメリカ・南アジア地域のリーダーシッププログラムの設計・主導に当たっていました。バーナデットは彼女のキャリアを通して、常にコミュニティの関与と協働を重視してきました。彼女の経歴についてもっと知りたい方は、こちらのメディア向け広報をご覧ください。
バーナデットは、ウィキペディア25周年という重要な節目の時期に財団に加わります。世界は、社会・技術・規制・世代における空前の変化に直面しています。ウィキペディアの影響力が大きくなるにつれて、人々や意思決定者達にしっかりとウィキペディアのモデルを理解してもらい、その未来に貢献していただくことの重要性もまた大きくなっています。今までに無く、ウィキメディアプロジェクトへの理解を広げる必要性が高まっており、バーナデットはこの新時代に財団を導くのにふさわしい指導者となるでしょう。
より詳しくは、彼女自身の言葉でお読みください。:
バーナデットからのメッセージ
こんにちは!オラ!(スペイン語で「こんにちは」)マルハバ!(アラビア語で「ようこそ」)
まず、卓越した知性と大胆不敵さを併せ持つウィキメディアプロジェクトの数々に、敬意を表します。そして、畏れ多くもこの運動に参加できること、光栄に思います。
ここ何ヶ月かの間、私はあなた方の仕事、コミュニティ、困難、そして最も重要であるところの影響について、学んで参りました。私のここまでのキャリアは少し異例ではありますが、ウィキメディア財団の理念・使命・価値観と私の間に、私は深い繋がりを見いだしています。私がこうしてあなた方と出会うまでのことについて、すこし聞いてください。
私は、父と父方の祖父母が育ったブロンクスに生まれ、プレザントヴィルで育ちました。16歳の時に高校の交換留学でリオ・ガジェゴスに引っ越し、その地で新しい言語を学ぶと共に、新しい視点に目を開かされました。特に、ホアキン・トレス・ガルシアの絵画「América Invertida」は私の価値観をガラリと変えました。それから30年が経った今でも当時のホストファミリーは私の人生の宝物で、私のスペイン語にははっきりとアルゼンチン訛りが残っています。
ボストンカレッジを卒業後はJPモルガンで同社の初期ウェブベース顧客プラットフォームの設計支援に携わりました。その後は公共のための仕事をしたいと考え、2004年からアメリカ国務省で勤めることになりました。外交官としてコロンビア・イラク・アラブ首長国連邦に駐在したほか、ワシントンD.C.の国務省や国家安全保障会議でも様々な業務に携わり、政治的・文化的・思想的に異なる立場の人々から様々なことを学びました。フスハーも学び、カイロの路上で話したときは皆に優しく笑われたりもしました(訳注:フスハーは公式言語なので日常会話では用いない)。社会に揉まれる中で、人は時に冷笑的になることがあります。その状況において、世界への信頼を取り戻そうと努力することは大切なことです。私が国家安全保障会議の上級職を退き、一年間ジョージタウン大学で教職を勤めたのはそのためでした。生徒達に囲まれ、私は元気を取り戻し、生きる意味や、世界をよくするために常に新しいアイデアが必要だという信念を取り戻したのです。
2017年に当時のオバマ大統領夫妻が、より機会にあふれ、参加でき、信頼のできる世界を作る人たちを支援するためにオバマ財団を立ち上げたとき、私もそれに参加しました。私はアフリカ・アジア太平洋・南アジア・ヨーロッパ・ラテンアメリカにおいて公共善を推し進める公共部門や市民組織、民間部門の指導者たちを支援する、指導力開発プログラムの設計を率い、理念を共有する人々が協力することで、いかに集団的で確固たる、持続的な影響がもたらされるかということを、この目ではっきりと見たのです。
2022年、私は米国チリ大使として公共の仕事に帰ってきました。私が17歳の時に初めて訪れた国です。その時は30年後に米国大使として帰ってくるなんて、夢にも思いませんでした。大規模な大使館を率いる経験は、私に以下のようなかけがえのない教訓を与えました。意見が対立することは失敗ではないこと。開かれた心は強さであること。事実とデータと透明性は信頼を培い、信頼できる資料に基づけば敬意に満ちた議論が可能で、それは健康的であること。罵倒は卑劣で非生産的で、積もった恨みや不満は組織を蝕むこと。過程が大切なこと。協働はより良い結果を生むこと。
この期間の私が最も誇りに思っている業績のいくつかは、共通の目的と相互理解に基づいて、互いの違いを乗り越えて築いた協力関係です。その中でも、多くの意味でウィキメディアに関わる皆様の精神と響き合うものを3つ取り上げさせてください。
- フンボルト・ケーブル。南米とアジアを結ぶ初めての海底ケーブルであり、今まさにデジタル接続のあり方を大きく変えようとしています。
- 天文学に関する取り組み。アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(現在世界で最も強力な電波望遠鏡です)やNSFヴェラ・C・ルービン天文台、そして完成すれば歴史上最大の官民科学プロジェクトとなる巨大マゼラン望遠鏡などです。これらの取り組みは、人類の宇宙への理解を広げるため、国際的なパートナー達を一つに結びつけました。
- 1968年から1991年の間のチリ情勢に関係するアメリカ政府文書の機密解除とスペイン語への翻訳。これは透明性を達成するためのより大きな施策の一環として行われ、その主目的の一つはチリ国民が彼らの歴史に関する資料に直接触れられるようにし、起こった出来事について彼らが十分な知識に基づいて意見を形成することを助けることでした。
何にもまして私が大使として最も喜びとしたことは、太平洋岸の漁村や、議会、パタゴニアの羊農場、鉱山町から、アタカマ砂漠、アラウカニア、ティエラ・デル・フレゴに住まう先住民の方々まで、多くの人々とお会いし、彼らの物語や経験を伺ったことでした。
私のここまでの道程のあらゆる局面において、私は新しいスキルを得て、また予想もしない形で困難に出会いました。それぞれの場面が私を作り上げ、また私がどのように世界と関わっていくかを形作りました。好奇心や、創造性、レジリエンス、親切さ、そして謙虚さが培われました。私のキャリアが私に与えてくれた最も大きなものは、素晴らしいチームと共に成長し、指導者でありかつ学習者であれたことでした。
多くの人と同じように、私は長年にわたりウィキペディアの愛読者でしたが、編集者として参加したことはありませんでした。学べば学ぶほど、私たちが共有しているコミットメント――使命に根ざした仕事、多様なステークホルダーとの関わり、複雑な問題への挑戦、好奇心と楽観の涵養、そして原則は「何をするか」だけでなく「どのようにするか」をも導くという信念――への理解と敬意が深まってきました。ですから、私は財団に関われること、真にわくわくしています。
ウィキメディア・コミュニティが示してきた献身、創造性、喜び、そしてレジリエンスに、私は感動しました。Wikipediaは25周年を迎える2026年、世界中のボランティア(皆さんのことです!)およそ25万人によって300以上の言語で書かれ、編集され、検証されてきた、6500万を超える記事を、私たちは祝います。
可能性に満ちたこの瞬間を迎える一方で、私たちは大きくて複雑な問題にも直面しています。AI時代には、人間の知識、信頼、透明性、中立的な観点、そして協働の価値は、かつてないほど高まっています。皆さんは世界の目であり耳であり、歴史の目撃者であり、記憶の管理者です。これらの取り組みを継続的に改善しようとすることは、なんと特別な責任、使命でしょうか!
共に、私たちが大胆に挑戦し、リスクを取り、楽しみながら、未来に向けた共有されたビジョンを形づくり続けられることを願っています。私は、透明性、誠実さ、楽観、そしてボランティア主導のガバナンスのモデルへの敬意を軸に、財団を導いていきたいと思います。財団CEOに就任するにあたり、私が注力することは明確です。耳を傾け、学び、そして人々が最善の仕事を行えるよう支援すること。マリアナによる知識共有と、円滑で熟慮された移行への献身に、深く感謝します。
バーナデットからの質問
1月20日から、皆さんの近くでミーティングを行います。パズルグローブの周りで、オンラインでも、対面でも。ウィキ・コミュニティや提携団体、財団スタッフ、そしてその他のパートナーの皆さんとお会いする予定です。その際の初めの会話を方向付けるため、下記について教えてください。
- 何がきっかけでウィキメディア運動に参加しましたか?
- どうすれば次の25年も、私たちは関わりを持っていられるでしょうか?
- ウィキ・リソースのうち、わたしはどの3つを最初に読むべきですか?
あなたのコミュニティを最もよく知っているのはあなたです。そして、あなた方の洞察こそ、私を導くのです。
25年前、ウィキペディアはただの夢に過ぎませんでした。今日では、それはオンラインにおける知識の大黒柱です。エンパワーメント、機会、協働、合意、希望のそれでもあります。
歓迎してくださってありがとうございます。あなた方一人一人のことをよく知り、私たちの未来を共に作ることを、楽しみにしています。
敬具 バーナデット