ウィキメディア財団 年次計画/2022-2023/草案/目標

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ウィキメディア財団年次計画 2022-2023年度

ウィキメディア財団 目標 2022−2023

  1. 知識の平等を促進する 集団的活動に、より強い地域的な焦点を当てます。
  2. ウィキメディア・コモンズとウィキデータを始めとする740以上のウィキメディア・プロジェクトに対する製品と技術サポートの優先順位付けと割り当て方法を強化することによって、サービスとしての知識への取り組みを深めることができます。
  3. 運動憲章、ユニバーサル行動規範、運動戦略の実施などの重要な優先事項を支援することにより、運動のガバナンスと健全性を強化します。
  4. 財団の業績と効率の向上について、翻訳/通訳支援の改善、影響評価指標をより有意義なものに引き上げること、共有サービスを設計して真のグローバルな職場環境の補佐を実施します。

目標1:地域に焦点を当て知識の公平性を促進

社会運動として、権力と特権の構造から取り残された知識とコミュニティに力を注ぎます。あらゆる背景を持つ人々を歓迎し、強力で多様なコミュニティを構築します。社会や政治、技術面の障壁は、無料の知識へのアクセスと貢献を阻むものとしてを取り払います。- 知識の公平性の定義、典拠は私たちの運動戦略方向性

ウィキメディア財団は知識の公平性促進に目標を設定し、そのひとつはグローバル化した運動への支援をさらに地域化することです。権力の分散と地域への権限委譲の要請は、より地域に根ざしたプログラム構造(例:助成金交付)および他のモデルに結びつき、ハブの概念もこれに含まれます。公平性のレンズを通じて、地域本位のニーズやコンテクストの個別化に対応してきました。このような目的を支援するには、財団の取り組み方をさらにどのようにシフトすればよいでしょうか。

手始めに、8つの地域を中心に、より多くの仕事を整理していきます。地域の定義は将来の計画サイクルで必要に応じて改善・改良されますが、現時点では主に現在のコミュニティリソース地域構造に基づいています。

  1. 東アジア、東南アジア、太平洋地域(略号ESEAP=East, Southeast Asia and Pacific)
  2. 南アジア(South Asia)
  3. サハラ以南アフリカ(Sub-Saharan Africa)[1]
  4. 中東とアフリカ北部(MENA)
  5. ヨーロッパ中部と東部(CEE)及び中央アジア
  6. ヨーロッパ北部と西部
  7. ラテンアメリカとカリブ海地域
  8. 北アメリカ(アメリカ合衆国、カナダ)

6月から、財団のいくつかのチームは、世界のさまざまな地域で共に創造できるインパクトを定義するために、会話を繰り返します。まず、過去から学んだ教訓を振り返ります。その後、コミュニティ、個人ボランティア、地域協会、ユーザーグループ、テーマ別組織、フリーな知識のエコシステムとそれ以外のパートナー組織によって現在行われている活動の四半期ごとのレビューを開始します。そして、財団の様々なチームによる計画的な作業を検討し、集中的な成果とより影響力のあるパートナーシップのために優先順位をつけ、資源を調整します。四半期ごとに改善し、Diffで学びを共有します。

今後1年間で、運動とフリーな知識の盟友たちが世界のさまざまな地域で共有されるインパクトに向けてどのように活動しているかがより明らかになるはずです。ウィキメディア財団はこれらの目標を共同で達成するために最も適切な役割を果たすことができます。

目標2:ウィキメディア・コモンズとウィキデータを始めとする「サービスとしての知識」への貢献を深化

利用者に奉仕するために、インターフェースやコミュニティに関わらずオープンな知識を世界に提供するプラットフォームになろうとしています。志を同じくする者やパートナー組織のため、ウィキメディアを越え無料の知識を組織し交換するツールを作ります。このインフラにより、私たち自身を含めたどなたでも、さまざまな形式の無料で信頼できる知識をで収集し利用できます。 - 「サービスとしての知識」の定義、典拠はウィキメディア運動の戦略的方向性より。

多言語にわたるウィキメディア・プロジェクトが740超へと増え続ける中[2]、一方で財団の現在の支援にどのように優先順位をつけるべきか問いかけを厳しくしなければなりませんし、他方で既存の資源の再配分および/あるいは技術ニーズに充当する新しい資金の確保を通じて、能力向上に尽力する必要があります。ある調査では(不完全で反復的ながら)、さまざまなウィキメディアのプロジェクトに対する財団の資源配分の現状を把握しようとしました。その結果、依然として財団の資源の大部分は多言語展開のウィキペディア事業に投入されていることが確認されたのです。

ウィキメディア・ドイツ協会(WMDE)との協力協定を結んだ当財団は、引き続きウィキデータへの支援を拡大していきます。これはウィキメディア運動の未来にも、無料の知識の未来にも重要なプロジェクトです。今後1年間、財団はWMDEとのパートナー関係を強化してウィキデータの目標と目的を支援していきます。

ウィキメディア・コモンズのマルチメディア・チームが「構造化データ・チーム」に姿を変えて以来、コモンズの中核的なマルチメディア基盤に関して一方では正式な説明責任は消失して修復が避けられない事態になったのですが、他方で今後1年の優先課題として設定したものがあります。

ウィキメディアのプロジェクト群にはそれぞれ個別のボランティアその他の関係者のコミュニティがあり、担当するプロジェクトのニーズに応じて製品開発や技術進化のアイデアや計画を抱いています。財団はほとんどの場合に支援と資源の提供者ではあっても、目標は常に一致するわけではありません。今後の1年を費やし、財団の説明責任と所有権をもっと明確にすること、財団の優先順位をもっと可視化すること、新年度の事業として取り組むか継続しないか具体的に示すことに焦点を当てていきます。

世界が今、私たちに求めているもの

ウィキメディアが属する社会技術的エコシステムは多層であり、オンラインとオフラインの多くの分野にまたがります。世界を定義する複雑な傾向があるとすると、ウィキメディアは全体を形成する要素であると同時に、ウィキメディア自体がそれによって形作られています。私たちの集団作業に影響を与える話題には事欠きませんし、どれが最重要かという明確な合意も成り立っていません。

知識の公平性と、サービスとしての知識の両方を促進するために、今後1年間にもっと注意深く見守る必要がある2つの傾向は、政府の規制の高まりと、偽情報とどう戦うかについての世界的な懸念の高まりです。いずれも重要な知識分野であり、現状に対する解決策や代替策を探し求めている人々に向け、ウィキメディアには提言できること、提供できる複数のモデルがあります。私たちの見識では、財団や提携団体、ボランティアはこれらの両分野において、すでに研究の貢献とプログラム活動を進めています。

世界のさまざまな地域のコミュニティ役務者、提携団体、パートナーとの連携を図り、さまざまな状況をサポートするために、耳を傾けることから1年をスタートさせます。ウィキメディアを超え世界にもっと大きな影響を与えるため、これらの分野で一貫性と整合性を高める方法を問うことになります。

目標3:運動の組織統治と健全性を強化

運動の組織統治をサポートし続ける必要があり、運動戦略のさまざまなワーキンググループが明確にして勧告に結晶化されたニーズを評価しなければなりません[3]。運動戦略の勧告事項の発表以来、これらの努力を進めるためボランティアの皆さんも何百人、何千人と優先順位の議論に貢献してこられました。これらのイニシアティブは運動体としての私たちの意思決定に大きな影響を及ぼし、財団にとってこれら取り組みに寄せられた支援は今後の財団事業計画に不可欠です。

このコミットメントは、今後1年間、2つの優先事項を通じて特に目に見える形で示されます。(1)運動憲章の支持、(2)ユニバーサル行動規範(UCoC)の支持です。UCoCはウィキメディアコミュニティにおける安全と包摂を提供するために不可欠であり[4]、運動憲章は運動全体におけるそれぞれの役割、責任、説明責任を明確に[5]するものです。

これは以下の継続的な活動、すなわちコミュニティ選挙や信頼と安全案件、コミュニティが組織統治に関する会話や技能開発へ参加すること、ハブの開発を支援して意思決定における分権と公平性を継続的に進めることなどと並行して行われます。

目標4:財団の業績と有効性の促進

急成長する組織は、縦割りになり、物事の進め方や評価方法に人為的な隔たりが生じることは珍しいことではありません。これは確かにウィキメディア財団にも当てはまりました。財団の多くの部署が同じ問題を何度も何度も、時には似て非効率的に、時には特異な方法で解決しています。この散在したアプローチは、組織全体の影響を評価し、経験から学ぶことを難しくしています。

次年度は、「点と点を結ぶ」ための社内活動に多くの時間を費やし、効果を高め、より協調的なアプローチによって必ずしも多くのリソースを使わずにより大きな効果を得られるコンテンツ領域を特定することに焦点を当てます。多言語主義とデータに基づく意思決定というコミットメントを支える出発点をいくつか選びます。[6]

  1. 財団全体の翻訳・通訳サービスとは。ウィキメディア財団における現在の資源配分を調査したところ、ほとんどのチームでは言語サポートをすでにかなり提供しているとわかりました。しかしながら、これは外部の業者、契約職員とボランティアが担当しています。締め切りまでの時間や言語、技術的専門知識に起因して一律な対応はできないとしても、連携を高めたアプローチに切り替えるとグローバルなコミュニティの価値観にもっと沿わせた言語サポートの方策が特定できると考えられます。
  2. 当財団段階で注視すべき測定基準とは。消費者、投稿者、コンテンツそれぞれをより接続したアプローチで測定するならば、より良い意思決定に導く組織の主要な指標を特定できようになります。これは同時に、データを重視するさまざまな人材やツール、システムへの投資改善にも役立つはずであり、その中にはまだ効果的に活用できていないものも含まれます。
  3. 共有業務(財務、人事、法務など)への取り組みをもっと統一しグローバルな環境に終える財団の運営方法を改善すること:焦点はウィキメディア運動のインフラのニーズであると同時に、当財団という組織内部の「本質的な運営インフラ」にもあります。

今後数ヶ月は、同様の考え方とアプローチを必要とするどのようなイニシアチブを追加して「点と点を結ぶ」べきか特定に時間を費やすことになります。さらに財団の職員と理事会、コミュニティには、承認したり変革するべき分野を当財団が特定できているかパフォーマンスを評価する新旧のベンチマークがあります。これらのベンチマークには外部の最善手法もあれば(例えばアメリア合衆国の非営利団体を評価する「チャリティー・ナビゲーター」)、ウィキメディアの独自性に順応したものを開発する必要もあるかもしれません。では私たちに適しているかどうか、検討に値するベンチマークはどのような同種の組織が提起するのか、候補の比較はどのような次元で行うのでしょうか?(※=Charity Navigator。)

年次計画の立案プロセスと地続きの案件として、財団はそれ固有の資源増加を見込みつつ、イニシアティブの中から長期にわたり複数の予算年度を当てるものを特定して適切な資金提供を施すためメカニズムの改善を進める必要があります。この先の1年を費して考慮する対象とは、広範な発想の事例となる明確な提案、当財団の使命や運動戦略との整合性を検討し評価する方法の構築、提示された問題の解決案、当財団がこのプロジェクトの担当として最適であるという根拠となります。これにより、単年の年次計画では不可能な複数年投資を実施するかどうか判断ができます。

計画の「立て方」において、運動戦略の推奨第10項に依拠して強く適応させるアプローチが最重要ポイントです。その定めるところとは、「実施の評価を反復すること、外部の状況を評価して適応すること、変化のプロセスを反復し評価に基づいた方針と手順の順応、結果を広く共有すること、分析と評価と学習の共有を促進すること」とされています。この意味とは、より「スリム化」した手法を積極的に活用し、学びと試行や失敗と再挑戦のサイクルを短時間で実行することであり – これらはウィキメディアのプロジェクトの多くでも基本の五本の柱の一つとなっています。これはウィキメディア財団の実務上、年単位の大枠の予算処理に代わり、四半期ごとの計画と予算サイクルをさらに構造化する形式に移っていくことになります。

脚注