ウィキメディア財団 年次計画/2023-2024

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概要

ウィキメディア財団はずっと過渡期にあります。昨年2022年に新しい首脳陣を迎え、当財団の最高経営責任者と最高製品技術責任者が着任しました。さらにさまざまな重要な問題についてグローバルコミュニティとの会話を進めており、取りあげた課題は役割と責任分担を定義する憲章を将来的に制定することや、共有資金リソースの調達にバナーを介する募金方法に至ります。今年の年次計画では、迅速な解決策のない戦略的問題に対応する複数年の取り組みをさらに明確に示し、財団の情報提供として運営方法をより詳細に伝えようとしています。利害関係者の皆さんには、ぜひ多くのフィードバックをお願いしたく、あらかじめ感謝申し上げます。(※=Chief Executive Officer。Chief Product and Technology Officer。)


ウィキメディア財団2023-2024年予算の概要は下記をご覧ください。

現在の立ち位置

昨年のこと、当財団は仕事のやり方 を根本的に変えることに集中しようと決めました。それには、地域ごとに活動を組織して世界中のコミュニティそれぞれのさまざまなニーズに対応すること、財団内の価値観を刷新して私たち自身の協働のレベルアップを図ることを含みます。私たちのどの 行動を有意義にシフトするのか考える上で、より良い立ち位置をもたらすものであり – 特に私たちを取り巻く世界の変化がさらに予想外の方向に進みつつある現状では – 2030年の戦略方向性を目指すという共通の目標をにらみ、集団として与える影響の評価に役立ちます。

ここでもう一度、私たちを取り巻く世界の変化に目を向け、まず熟慮しなければなりません。私たちに何を突きつけているか、私たちはどのように適応していけば良いのか。この年次計画は複数年戦略計画に基づいており、長期的な視点から変化を見つめてウィキメディア運動の収益、製品と技術、役割と責任分担を検討しています。外部の傾向に照らすと、従来の検索エンジンに取って代わってソーシャル・プラットフォームの台頭が続き、人工知能はデジタル世界をさらに混乱させるという恐れが示されています。それに加え、私たちの世界的な運動が依拠する法的環境は比較的安定した状態を十年単位で保ってきましたが、それさえ大きく変化しつつあります。誤報や虚偽情報などあいつぐ脅威への対抗策として立法者はインターネット・プラットフォームの規制に前向きであり、その方法は私たちの使命を根本的に危険にさらす可能性があります。これらの脅威が広がり両極化が進むと、私たちのプロジェクトと作業には新たな批判のリスクが生まれるかも知れません。最後になりましたが、今後も不確実であろう世界経済に備えて私たちの活動予算の収入の道すじを評価すること、私たちの野心や共同作業の取り組みを支える資金の発展を支える投資を今すぐ行う必要性はますます迫ってきました。

将来への取り組み

ウィキメディア財団の年次計画は運動戦略のうち公平性の推進に根ざし、当年で2年目に入ります。その趣旨は運動戦略勧告と財団活動の結びつきをさらに密にして、2030年戦略方向性に沿った前進をさらに深める点にあります。今後ともその実行には、運動のなかで勧告を実行する他の人々との共同計画が原動力となります。これをさらに実用的に進めるには、財団の支援において地域ごとの焦点を深め、世界のすべての地域のさまざまなコミュニティのニーズをよりよく満たすよう目指します。さらに、今後、導入する運動憲章には役割と責任をより明確にすることが期待され、地域ハブやグローバル評議会など協働の新しい構造を通じて実施する見込みです。私たちの運動の意思決定における公平性を高めるため、憲章プロセスとの協力を今後も継続するつもりです。

年次計画作成の取り組み方:

  • 運動戦略に根ざすこと。知識の公義、知識というサービスと結び付ける。より密接に運動戦略の勧告と連携させる。
  • 外部に向いた視点を持つこと。右記を出発点とする:私たちを取り巻く世界で起こっていることは何か。外を見ること。私たちの作業にどんな外部の傾向が主に影響を与えるか見きわめる。
  • 製品 + 技術に焦点を当てること。コミュニティとボランティアの支援にあたり、製品と技術の大規模な実現というウィキメディア独自の役割を再び中心にすえる。

当財団は今年、年次計画の中心に製品と技術を置き、人々やコミュニティが大規模に協力し合うプラットフォームという独自の役割を全面に追い出します。この取り組みを総体として「ウィキ体験」(Wiki Experiences)と呼び、ウィキメディアンが担う意味の形成と知識創造というプロセスの中心はボランティアであると認めます。そこで編集初学者と比べて、当年は編集者のうち確立した人々を優先(拡張された権限を預かる管理者やスチュワード、パトロール係やあらゆる種類の調停者など役務者とも呼ばれる人々)、質の高いコンテンツを拡充し改善し、さらにさまざまなプロセスをコミュニティのために進める人々に、日常の重要な作業の実施に適切なツールが確実に行き渡るようにします。プラットフォームの効果的な管理には当財団がインフラストラクチャとデータのニーズに大規模に対処する必要があり、それはプロジェクト群の特定のウィキ経験を超えて拡張する可能性もあります。以下では、この作業を「シグナルとデータ・サービス」(Signals & Data Services)として説明します。また一連の作業には「将来の視聴者」と呼ぶカテゴリを設けて(Future Audiences)、多様な視聴者に働きかけ編集者や投稿者として巻き込む改革(イノベーション)の加速に必ず取り組むことになります。

トレードオフと選択

ウィキメディア運動はその成長のほとんどを特定の財務モデル(バナー告知による募金)に頼って進めてきましたが、限界に達しつつあります。これを新規の募金の流れで補うには – including ウィキメディア・エンタープライズ(収益事業)ならびにウィキメディア財団基金(Wikimedia Endowment)を含めて – その開発に時間を取られます。なかでも世界経済の不確実な見通しがあるため、バナー募金が過去10年に積み上げた規模と比べ、今後の数年は資金調達の伸び率がそれと同レベルに達する可能性は低くなります。

このような流れを見つめた昨年、直近の3年間と比べると当財団は成長率をゆるめました。 現在は人件費とその他経費の両面で内部支出の削減に取り組み、今後の数年は支出をもっと持続可能な軌道に乗せようとしています。これら予算締め付けにもかかわらず、私たちは運動の提携先に支給する資金総額を増やす予定で、助成金の拡大も含まれます。助成金の増額と並行して世界規模の経費インフレをにらみ、運動への新規参入者の補佐に配慮し、カンファレンスや運動イベントの支給金を増やします。この計画ではどの地域でも補助金が増額する中で、十分に声の届かない地域を優先して増額率を多めにします。提携団体や新規参加者がこのような成長をするには、助成金プログラムの一部を圧縮する必要があります(研究助成と協定基金など)。また当財団の中核となる能力を評価したところ、運動の他の参加者はどの特定の活動に入って有意義な影響を受けるかがわかり、今後1年でその方向にどう進むか実際の方法を模索していきます。

透明性を高めて説明責任を果たす意図に従って、この年次計画には詳細な財務情報を含めてあり、それは特に当財団予算案の構造にも、財団のそれぞれの部門の構成にも、グローバルなガイドラインと俸給の原則にもおよびます。

目標

ウィキメディア財団がかかげる2023-2024年予算年度の目的は主に4点です。ウィキメディア運動の戦略的方向ならびに運動戦略の勧告に沿うように構成しており、昨年度の予算案で特定した業務の多くを継続します。まとめると以下の各点です。

この使命に向けて共に進む

以下の各節では、これら4件の目標を支える当財団のさまざまなチームの業務詳細をより具体的にご説明します。まずウィキメディア財団のこれまでの予算策定の概要 をご紹介した後に、私たちの周囲で何が変わりつつあるかに着目し – それがウィキメディアと当財団の優先事項にどのように波及するか考察します。そのほかに考慮すべきことはないでしょうか? 私たちは足並みを揃えて、運動が目指す2030年の理想に向かって近づいているでしょうか? 現状、私たちは世界に何を期待されているのでしょうか?

この使命を一緒に果たすという原則を支持し、財団職員はウィキメディア財団の価値観の刷新に当たっています。以下の内容をお読みいただき、その私たち全員との約束を当財団がどのように果たそうとしているか、より深く理解していただけましたら誠に幸甚です。

沿革