Wikimedia Foundation Board noticeboard/ウィキペディアの中立的観点強化とグローバルな傾向
- 「このメッセージすなわち"ウィキペディアの中立的視点の強化とグローバルな傾向について」(訳注:英語版原文)は2025年3月27日付でナタリーア・ティムキフNataliia Tymkivより発信しました。
ウィキペディアの中立的視点の強化とグローバルな傾向について
皆さん、こんにちは、
皆さんにマリアナ※アと私から連名でお願いがあるのですが、まずはウィキメディア財団が「ディフ」(Diff※イ)に載せた、こちらの投稿[1]をご覧いただけないでしょうか。これまで進めてきた世界の傾向の特定という作業 – 2022年に開始 – を反映しており、それは今現在、私たちが世界から何を最も求められているかを問う際に取り組むべき課題でもあります(※訳注:ア=マリヤナ・イスカンデル事務局長。イ=ウィキメディアの公式広域ブログ。)
ウィキメディアの各コミュニティを補佐して中立性への取り組みをさらに確実にするためウィキメディア財団は活動中の編集者、理事や研究者、助言者を招いて作業グループを組むこと、ウィキメディアのプロジェクト間に共通する中立的視点 (NPOV) 方針の標準化をめぐる推奨事項を検討することにより、ウィキペディアの保護とすべてのプロジェクトの整合性を高め、これら方針の管理にあたる信任されたボランティアの皆さんにさらに補佐を提供できるようにします。
より詳しい情報ならびにご協力いただく方法は、このページの下の方に載せてあります。またメタにもこの情報を載せてあり、ご参照ください。
グローバルな傾向
今年、グローバルな傾向の1つは中立性に関連しており、ウィキメディア運動の内外で大きな議論を巻き起こしました。オンラインの情報は信頼が下がったこと、どの情報が真実かという合意もまとまりがなくなったことです。人によっては世界の複雑さが進んで、かつてないほど人と人が分断されたと考えています。中立性に対してグローバルに脅威が高まってきたように見えるため、これまで以上にNPOV(※ウ)の方針が必要とされています(※ウ=中立的観点)。この基本原則はウィキペディアで非常に役に立っており、ボランティアの皆さんのほぼ25年に達する投稿によって、さらに強化されてきました。
この中立性の原則を NPOV 方針にどのように反映させるかは、ウィキメディアのプロジェクトごとに異なり、コミュニティが互いに学び合う機会に光をあてるものです。それはまた、脅威が拡大し規制強化も続く環境において、中立性に関する共通のグローバル標準は果たしてプロジェクト(ならびにボランティアの皆さん)をより適切に保護できるかどうか、検討していくことになります。
どの方針もそうですが、NPOV は 24年にわたって何百にもわたる言語から数万人もの人からインプット受けて改良を重ねてきました。コミュニティにおける議論は、このような進化のプロセスを経て、中立的視点の原則とその適用は私たちという模範の基本として保たれてきました。
NPOVの方針
コミュニティによる最近のワークショップでウィキペディアのさまざまな言語版における NPOV 方針を大まかに確認したところ、さまざまな違いや矛盾が明らかになり、さらにウィキメディアのさまざまなプロジェクトが互いから学び合う機会も数多くあるとわかりました。コミュニティから拡張権限を預かる利用者は NPOV 方針の管理も任されていて、これら方針が一部の言語版やプロジェクトでは不明確または未整備であるために直面してしまう課題を説明しておられました。
一般市民が報道の情報源(news sources)に対して信頼を下げるにつれて[2]、編集者は信頼できる情報源に依拠し、公平でバランスが取れた見解を編集上の偏りを交えないで伝えるという課題に直面しています。ご承知のとおり、ウィキペディアの整合性 – 特に論争の的となり変化し続けるトピックは – コミュニティの堅牢な組織統治の手順に守られており、その一例が公正でバランスのとれたアプローチを優先する ウィキペディア英語版における紛争解決の方針です(協議における礼儀規範、オーバーサイト制度、紛争解決のチャネルなど)。これら標準は文書化を充分に尽くし、不当な影響を防ぎ、この規模では他に類を見ない独立した非営利モデルの存在を維持するために特別に設計されています。論争の的となるトピックであっても、ボランティアの皆さんが中立性をうまく管理した実績を、私たちは何度も繰り返し目撃してきました。
主にローカルのコミュニティが実施してきた、より厳格なコミュニティ主導のコンテンツ管理方針は、ウィキメディアのプロジェクト群とウィキメディアンを守っています。
作業グループはグローバルな共通の標準を検討
これら不可欠な自己統治メカニズムを支えようと、この作業グループでは過去 20 年にわたり NPOV 方針を策定してきた慎重な検討に基づき、ウィキメディアのプロジェクト間の NPOV 方針にどのような共通の標準があると、これまで以上にプロジェクトを保護し改善しボランティアを補佐するのか、検討する予定です。作業グループの目的とは、ウィキペディアを世界中で非常に信頼される情報源にしてきたコミュニティ主導の方針について、知識の共有を促進することにあります。これには方針の確立のためにすでに進行してきた作業からフィードバックを組み込み[3]、ウィキメディアのグローバルなコミュニティで共有してきた価値観を反映するつもりです。
当初の一連の勧告ではウィキペディアの各言語版にまず焦点を当てており、来たる2025年6月に開催予定のウィキメディア財団の理事会で、財団の年次計画と予算案の承認に合わせて提示の予定です。
全員で取り組む課題です
世界がウィキペディア(ならびにウィキメディア全域)に寄せる依存は – AI チャットボットから検索エンジンや音声アシスタントやインターネット上のコンテンツ再利用者まで、ますます高まっています。私たちがこれまで以上に活用される時こそ(そして必要とされています!)、私たちの基本原則を強化し、共通の価値観を維持しなければなりません。ウィキペディアの中立性を強化すると、世界中の何十億もの人々が頼りにするコンテンツを配信する上で、ウィキペディアの信頼性がさらに高まります。
ウィキメディア運動の内外でこれらのトピックに関心のあるすべての方から寄稿をお待ちしています。メタページにあるこちらの専用ページ、または財団の年次計画の対話の一部として寄稿してください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 Nat Tymkiv, 理事長
Maryana Iskander, CEO
リンク集:
- ↑ ウィキペディアの中立的視点を強化(Strengthening Wikipedia’s neutral point of view)
- ↑ ロイター報道研究所 編『ニュースから目を背ける人々。そうなる原因とは』(Reuters Institute for the Study of Journalism)
- ↑ バナーやロゴを一時的に掲出したり変えたりする場合、コミュニティがどのような議論をしてきたか、事例の収集を手伝ってください
どうぞよろしくお願いします。 antanana / Nataliia Tymkiv ウィキメディア財団理事長