中立的な観点

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NPOV
ウィキメディア・プロジェクト群の方針「中立的な観点」とその歴史および意味について解説します。

中立的な観点 (neutral point of view=NPOV) という厳しい方針は、一方でウィキペディア ウィクショナリー ウィキブックス ウィキクォート ウィキニュース にはあってもーー他方でウィキメディア・コモンズウィキソースウィキバーシティ ウィキボヤージュウィキスピーシーズ 、さらには数あるウィキメディア・コモンズ など多数の「裏方」プロジェクト群 メタ・ウィキ にはありません。このNPOV方針ではプロジェクトの使命をもっともよく実現する方策として、事実に対するさまざまな見方や解釈があるとしても特定の観点を推したり殺(そ)いだりするのではなく、さまざまな見方や解釈の存在すら受け入れ、事実を公正かつ中立的に提示するよう目指すことだと述べています。(言及すべき観点の選択につきものの限界がそのまま争点になる場合もあります)。この方針は冒頭に挙げた各プロジェクトの全言語版に存在しますが、プロジェクト間や同一プロジェクト内でも言語によって細部は顕著に異なっています。

NPOV スタイルで記述する際は、広く支持され、かつ認められた観点が必要ですが、必ずしも包括的である必要はありません。

NPOVは記事を執筆する上で究極の目標ですが、一人の書き手が直ちに達成するのは難しいことです。このため、しばしばNPOVは(一般にウィキ執筆がそうであるように)逐次的な過程として考えられます。これは、合意形成に基づく意思決定に従って、対立する複数の観点が用語や構成の点で歩み寄って、全員が許容できる中立的な記述を生み出すというものです。

NPOVは、MediaWikiの2つの特徴がなくては可能とはならないでしょう:編集者が議論する;表題の下に、1つのページだけが存在する。つまり、«(i)個人間で、情報の共有とお互いを説得するのに直に交流する、そして、(ii)彼らは彼ら自身の意見をはっきりさせるために、共有されているメディアを編集する»[1]

これは、 当事者主義として取られることもあるでしょうが、願わくば礼儀正しくあってほしいものです。 編集者は、出来る限り NPOV の原則に近く寄り添い、他の編集者の良心に基づいた改善点を快く受け止めることを期待されています。この構図がうまくいかないと、編集合戦 に陥り、2人以上の人が妥協を拒否し、お互いの変更について完全に立ち返ることなく、自身の主張を貫き通すことになります。

汎用の百科事典というものは、中立的な観点に立って表現された知識を組み合わせて集めたものです。百科事典の執筆においては、中立的でない特定の観点に立つことは最大限避けるべきです。

中立的な観点は、賛成者も反対者も承諾できる、事実や考えの書き方を探ります。もちろん、100%の承諾を得るのはほぼ不可能です。世界には特定のイデオロギーを信奉し、自分の主観を強く主張するばかりで、他の意見に一切耳を貸さないような人もいます。我々にできるのは、各論では異なっても総論には賛成する、合理的な考え方のできる人々に受け入れられる書き方を探ることだけです[2]

分かりやすくするために、いくつかの例を挙げてみましょう。

1. 百科事典の記事では、執筆者がそう信じていたとしても、企業を犯罪者扱いするべきではありません。そのように考える人もいると事実を書くべきであり、その人たちの考えの理由も添えるべきです。さらに反対意見の人たちの意見も同時に提示するべきです[3]

2. 百科事典の記事では、レッセフェールの資本主義が最良の社会システムだと論じるべきではありません。その観点を信奉する人の論と、その観点を受け入れない人の論とを提示するべきです[4]

百科事典的に書くためには、物事が「どうであるか」を書くのではなく「どうであると信じられているか」を書くのが近道かもしれません。このような言い方が主観論的、または集産主義的、帝国主義的な言い方に聞こえていましたら、私にそのことを訊いてください。それは誤解だと思うからです。人が何を信じているかは客観的事実に属することであり、中立的な観点に立って「そのこと」を提示するのはまったく困難なことではありません[5]

— ジンボ・ウェールズ(ウィキペディア創設者)[6][1]

関連項目

注記

  1. Modeling Social Dynamics in a Collaborative Environment (「共同開発環境に組みこむ社会的な相互作用」2014年)。対抗するシステムViewPointでは改訂版(つまり意見)は同等に表示され、特定のページに無数の別版が共存します。
  2. 原文:The neutral point of view attempts to present ideas and facts in such a fashion that both supporters and opponents can agree. Of course, 100% agreement is not possible; there are ideologues in the world who will not concede to any presentation other than a forceful statement of their own point of view. We can only seek a type of writing that is agreeable to essentially rational people who may differ on particular points.
  3. 原文:1. An encyclopedic article should not argue that a corporation is criminals are criminals, even if the author believes it to be so. It should instead present the fact that some people believe it, and what their reasons are:, and then as well it should also present what the other side says.
  4. 原文:2. An encyclopedia article should not argue that laissez-faire capitalism is the best social system. [...] It should instead present the arguments of the advocates of that point of view, and the arguments of the people who disagree with that point of view.
  5. 原文:Perhaps the easiest way to make your writing more encyclopedic is to write about what people believe, rather than what is so. If this strikes you as somehow subjectivist or collectivist or imperialist, then ask me about it, because I think that you are just mistaken. What people believe is a matter of objective fact, and we can present that quite easily from the neutral point of view.
  6. 原文:Jimbo Wales, Wikipedia founder